MOTHER'S ROCK

Rock
Illustration by Baobab

タマゴの英雄

僕は今、地面に刺さった丸いモノの前にいる。 僕はこれがなんだか分かっている。 なぜならそれにはこう彫られているからだ、

「てつくすの血と肉。勇敢なフライングマン戦士、ここに眠る」

僕はマジカントに着くと、 街の探索もそこそこに表に出ていた。 街の北に向かい、ぽつんと立った建物に入った。 その建物には、同じ姿の兄弟が住んでいて、 僕が話し掛けると一緒に旅に出るという。

ここで違和感を感じた。 前回、少女が仲間になったときは、リストに表示され、 彼女に指令を出す事ができた。

今度は違う。僕は職業柄、 これはバグかしら?と首をかしげた。 戦闘に入ると彼は積極的に攻撃を仕掛ける。 こりゃぁいい。彼は成長すると強いかもしれない。 僕はそう思い、戦闘を続けた。

彼はダメージをくらう。 なぜか敵の攻撃は、僕よりも彼へと向かう。 まるで彼が僕の前に立ちはだかってるかのように。

彼は倒れた。僕は何もできなかった。 復活させる場所ドコだったかな。お金あったかな。 そんなことをすぐさま考え、 戦闘画面から通常画面に戻る。

え?

彼がいない。 もしかして…。と僕は考えをめぐらす。 えええええええええええええええええええええええええええええ。 そんなぁ…。僕は落ち込んだ。 不意のショックを受けてしまった。

まいった。

思わずそうつぶやいてしまった。

ある男の言葉が浮かぶ 「会わなきゃ別れもないわけだ」

そして、セーブをするために街に戻り、 また、街の北に向かった。

僕は今、地面に刺さった丸いモノの前にいる。 僕は、歩きながらこれを見た時、卵だと思った。 今も、これは卵だと思う。

強く願う。これは、卵だと。 勇敢なる戦士は、新たなる生命に向けて 今、力を溜め、時を待っているのだと。

僕にとっては、これは卵なんだ。

僕は言うだろう。フライングマン。また会おうと。

「てつくすの血と肉。 勇敢なフライングマン戦士、てつくすの心に宿る。」