仕事終わりの金曜日。 僕は渋谷TUTAYAにいた。 数時間前までここでMOTHERのイベントが行われていたはずだ。
その時あったはずの熱気は、風に流れ、 いつものように騒がしくそしてクールダウンしていた。
いつものエスカレーターを上がり、 4階の本とゲームの売り場に移動する。 エスカレーターを上がりきると目の前にMOTHERの文字。 早速手に取りレジに並・・・んだりはしない。
いつもの事だが、僕が何かを買うときは まず間をおいてしまう。 すぐさまそれが欲しいわけじゃありませんよ。 たまたまそれを見つけて、フンフン。 なかなか良さそうじゃないの買ってみようかな。 という誰に対するものでもないポーズを取るわけだ。
買う気マンマンの自分対する反作用か、 なにか抑えるものが自分に働くのである。 とりあえず、まぁ欲しい本でもあるかもしれないし、 本のコーナーでも回りましょうかね。 そんな言葉を頭に浮かべ、売り場を一周するも、 結局は特に集中して捜すわけでもなく またゲーム売り場に戻るわけだ。
ここまでくると腹をくくらねばなるまい。 この後、一緒に飲む人から、 早くしろとのメールも飛んできている。 みんなこの道を何気なく通っているのだろうか? そんな小心者は自分だけなんだろうか? そんなことを思いながらレジに手ぶらで並ぶ。
「ま、マザー」
一瞬空気が止まる。
「あ、MOTHER1+2ですね」
「あ、はい」
もう、こうなったら頭が爆発だ。 僕が鈴木だったら鈴木爆発だ。 「MOTHER1+2と言えばよかったか?」 「MOTHERの箱を持ってくればよかったんじゃないか?」 「箱を持ってこないで商品名を告げるだけなんて いかにも後ろにあるのを知ってるみたいじゃないか。」 「大人も子供もおねーさんもどころか 大きいお友達もって感じじゃないか」 などと考えていると商品は包まれ、僕の手元にやってくる。
手に取った瞬間にそんな気持ちはどこ拭く風。 すぐさま箱からさくっと取り出し、 SPにバシっとさし、電源をズバっと入れる。 なんてことは僕は大人なので耐えるのである。 今日のイベントはここまでなのである。
僕は上機嫌で、友達と飲みに行く。 「何買ったの?」「マザー」「しらないなー」 「糸井重里だよ」「金山の?」「そう金山の」 そんな話をしながら。